わさびの属す「十字花科植物」の種子には、刺激性の強い香味をあらわす「からし油」のもとになる成分が含まれています。中でも一番量の多いのが「アリルからし油」。この成分こそが、ツーンとしたわさび特有の辛味と香りをはじめ、わさびの数々の作用をもたらします。
採ってきてそのままのわさびをなめても何の辛味もありません。きめ細かくすりおろすほど強い辛味を得ることができます。これは、すりおろすことでわさびの細胞組織が破壊され、ミロシナーゼという酵素が働いて辛子油配糖体(グルコシノレート)が分解され、アリルからし油が生成されるためです。
アリルからし油は揮発性が高く、常温で蒸気になってしまいます。この蒸発時にヒトの味覚・臭覚細胞を刺激するため、ツーンと鼻に抜ける辛味を感じるのです。なので、わさびやその加工品を料理に使用する時は、風味を損なわないよう加熱後に使用してください。
わさびは時間とともに辛味がなくなったり、苦味やニンニク臭をしめしたりします。これは、アリルからし油が不安定な化合物であり、時間とともに分解されるためです。寿司屋でおろしたてのわさびを使うのは、この分解を防ぎ辛味を保つためにほかなりません。
一般にわさびというと、清流の流れるわさび田で栽培される「沢わさび」を指します。根茎の緑色が濃く、辛み、 香り、外観ともに優れ生食用として高値で取引されます。生産量の約3割強が生果用に、残りがわさび漬などの加工用になります。
一方、野菜のように畑(涼しい山林中)で栽培されるものを「畑わさび」といいます。「沢わさび」とは微量成分に違いがあり、少し辛みが弱いですが、同じ植物です。主に加工品や、ねりわさびの原料として使用されます。
全国の90%以上を、静岡と長野で生産しています。本わさびの大半は高級料理や寿司屋に卸され、スーパーなどの小売店には少ないのが現状です。また、わさびは現在海外でも生産されており、台湾・タイ・インドネシア・中国等からの輸入も相当量あります。
わさびには、栽培が容易で大規模農場で生産される「実生(みしょう)種」と、栽培が難しく近年生産者が減少している「真妻(まづま)種」の2種類があります。真妻種のわさびは成長が遅く、苗を植え付けてから収穫までに1年半~2年(実生種より1.5倍)ほどかかります。栽培には雛壇(段々)を利用し、きれいな水、安定した水温と気候、大量の酸素環境を必要とし、収穫は手掘りで行います。国内でも伊豆天城や御殿場の一部で栽培され、市場にはほとんど出回らない希少なわさびです。
特徴は、茎を輪切りにすると外側が緑色で中側が赤色をしていること。しまった身と、さわやかな風味、ねばりはつよく、しかしアク(苦味)は少なく、上品な辛みの中にもほんのりした甘みがあり、日本で一番優れた品種といわれております。
姿形は小さくゴツゴツしていても、その奥に意外な力を秘めているのがわさび!
健康食材としてよくメディアにも取り上げられ、こんな効果が期待できます。
体内の代謝の偏りを解消し、がん、脳卒中、動脈硬化など生活習慣病の予防によい食品といわれております。に加工品や、ねりわさびの原料として使用されます。
抗酸化作用を高める働きがあり、老化防止や若返りの効果があるといわれております。
辛味成分が魚の生臭さを消し、味にアクセントをつけ旨みを引き立たせます。だから、刺身の薬味といえばわさび! 欠かせない名脇役です。
菌の発育を抑制する力があります。
カビの繁殖を抑える力があり、わさびの辛味成分をシート、もしくはラベル状に加工した「抗菌・防カビ剤」等が開発されています。